年末の損出しは受渡日で年が決まる|2026年は12月28日の約定が最後
本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資手法・金融商品の購入や売却を勧誘するものではありません。国税庁の通達と日本取引所グループの休業日は、2026年10月14日に各資料を取得して確認したものです。税務の取扱いは個別の状況で変わるため、最終的には税務署・税理士・取引先の証券会社にご確認ください。投資信託・株式は元本割れすることがあります。
結論から言うと、上場株式などを売った損益がどの年に入るかは、原則として約定日ではなく受渡日(株式等の引渡しがあった日)で決まります。国税庁の措置法通達37の10・37の11共-1が、そう定めています。上場株式の受渡しは約定日から2営業日目なので、2026年に損失を計上したいなら、12月28日(月)までに約定させるのが目安です。12月29日(火)の約定は、年末年始の休業日をはさんで受渡しが2027年1月4日(月)になり、翌年の損益に回ります。

損出しの損益は、どの日で年が決まりますか?
原則は受渡日です。措置法通達37の10・37の11共-1は、株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期を区分ごとに定めていて、一般的な売却について「株式等の引渡しがあった日による」と書いています。証券会社の取引でいう引渡しの日が、受渡日にあたります。
損出しとは、値下がりしている銘柄を年内に売って損失を確定させ、同じ年の売却益と相殺して税金を減らすことです。相殺できるのは同じ年の損益どうしなので、「どの年に入るか」がずれると、相殺の相手がいなくなります。
約定日で申告する選択肢も、通達に書かれている
同じ通達には「ただし」が続きます。納税者の選択により、その株式等の譲渡に関する契約の効力発生の日で総収入金額に算入して申告があったときは、これを認める、という一文です。契約の効力発生の日は、一般に約定日のことです。
つまり、受渡日が原則で、約定日による申告も選べるという作りです。ただし、特定口座で証券会社が計算する年間の損益が、どちらの日で区切られているかは、口座ごとの取扱いを確かめる必要があります。申告で約定日基準を選ぶなら、証券会社の年間取引報告書の数字をそのまま使えないことがある点に注意が要ります。迷うなら、受渡日が年内に収まる日に約定させるのがいちばん確実です。

2026年の年末は、いつまでに約定すればいいですか?
上場株式なら12月28日(月)です。日本取引所グループの休業日一覧では、2026年12月31日(木)が休業日、2027年は1月1日(金)から3日(日)までが休業日です。12月30日(水)が年内最後の取引日、いわゆる大納会になります。
| 約定日 | 受渡日 | 損益が入る年(受渡日基準) |
|---|---|---|
| 12月25日(金) | 12月29日(火) | 2026年 |
| 12月28日(月) | 12月30日(水) | 2026年 |
| 12月29日(火) | 2027年1月4日(月) | 2027年 |
| 12月30日(水) | 2027年1月5日(火) | 2027年 |
土日と休業日を数えないので、12月29日の約定は、12月30日を1営業日目、1月4日を2営業日目と数えます。大納会の12月30日に売っても、受渡日基準ではその年の損出しにはなりません。
投資信託は、商品によって約定日から受渡日までの日数が違います。海外の資産に投資するファンドは日数が長く、海外の休日で申込みを受け付けない日もあります。投資信託で損出しをするなら、目論見書や販売会社の画面で受渡日を確かめてから、余裕をもって注文するのが安全です。
信用取引は、決済の日で決まる
同じ通達の(2)は、信用取引と発行日取引を別に扱っていて、「当該信用取引等の決済の日による」と書いています。現物の売却とは、日付の決まり方が違うということです。信用取引で年末に建玉を閉じるときは、取引先の証券会社で、その決済がどの年の損益になるかを確かめておきます。

損出しで、税金はいくら変わりますか?
例えば、年内に売却益が50万円出ていて、含み損30万円の銘柄を持っているとします。いずれも課税口座で、税率は20.315%と置きます。
| 項目 | 損出しをしない | 年内に受渡しして損出し |
|---|---|---|
| その年の売却益 | 50万円 | 50万円 |
| その年の売却損 | 0円 | 30万円 |
| 課税される譲渡益 | 50万円 | 20万円 |
| 税額(20.315%) | 101,575円 | 40,630円 |
差は60,945円です。ただし、売った銘柄の値下がりそのものは取り戻せていません。損出しは、すでに出ている損失を税金の計算に早めに反映させる手続きで、資産を増やす方法ではありません。同じ銘柄を買い直す場合は、売買手数料と、買い直すまでの値動きも費用に入ります。
売却損が売却益より大きく残った場合は、確定申告をすれば、一定の要件のもとで翌年以後3年間の上場株式等の譲渡益や配当から差し引けます。年をまたいでしまっても損失がなくなるわけではありませんが、相殺できる年が変わります。
NISA口座の値下がりは、損出しに使えますか?
使えません。NISA口座の利益が非課税になる代わりに、NISA口座で出た損失は、課税口座の利益と相殺することも、翌年以後に繰り越すこともできない扱いです。損出しの対象になるのは、特定口座や一般口座といった課税口座で持っている商品だけです。

FIRE資産で年末にやること
FIREを目指して課税口座で運用している場合、年末の確認は次の3つで足ります。①課税口座で、その年に確定した売却益がいくらあるか。②含み損のある銘柄が課税口座にあるか。③売るなら、受渡日が12月30日(水)までに収まる12月28日(月)までに約定させるか。
取り崩し期に入ると、毎年どこかで売却益が出ます。その年の利益と損失を同じ年に並べられるかどうかは、受渡日の数え方で決まります。12月の第3週あたりに、課税口座の損益を一度確認しておくのが安全です。
よくある質問(FAQ)
- Q. 損出しの売却は、約定日と受渡日のどちらで年が決まりますか?
- 原則は受渡日(株式等の引渡しがあった日)です。国税庁の措置法通達37の10・37の11共-1に定めがあり、納税者の選択で約定日(契約の効力発生の日)による申告も認められています。
- Q. 2026年の年内に損出しするには、いつまでに約定すればいいですか?
- 上場株式で受渡しが約定日から2営業日目の場合、12月28日(月)の約定が目安です。12月31日と2027年1月1日から3日が休業日のため、12月29日の約定は受渡しが2027年1月4日になります。
- Q. 信用取引の損益は、どの日で年が決まりますか?
- 同じ通達で、信用取引と発行日取引は「決済の日」によるとされています。現物の売却とは扱いが違うので、取引先の証券会社で確認してください。
- Q. NISA口座の損失で損出しはできますか?
- できません。NISA口座で出た損失は、課税口座の利益との相殺や、翌年以後への繰越しの対象になりません。
- 国税庁「措置法通達 37の10・37の11共-1(株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期)」:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/020624/sanrin/1273/37_10-11/01.htm
- 日本取引所グループ「休業日一覧」:https://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/calendar/index.html
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html
- 本文の数値は2026年10月14日に上記資料を取得して確認しました。売却益50万円・売却損30万円の金額は筆者による計算例です。